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うまくいかなかったブックトーク

お互いを思いやる心


2019年6月1日,2日 千葉県市川市 市川市文化会館

執筆担当者:武田朋彦

先週は、千葉県市川市で開催いたました。なんと14年ぶりの開催です。14年前と言えば、今よりもかなり多くのお客様が来られ、弊社の絵本展がもっと賑わっていたころです。 

さて、今回は・・・。 

最近にしては多くの子育て世代が来場してくださって、久しぶりにたくさんの子供たちの前で本を読むことができました。しかし、肝心のブックトークは、・・・ あまりうまくいきませんでした。せっかくたくさん来てくれたのに、本の世界にうまく誘い込んであげることができずに、本当にすみません。 お話を聞くことに慣れていない子が多いのはいつものこと。それをつかまえてこそ“憧憬社のブックトーク”なのですが、今回は少し暑かったこともあってか、集中力を切らして、ずっとぐずり続ける子が多くいました。こちらも少し焦ってしまって、お話がややちぐはぐになってしまい、ますます子供たちの心が離れてしまいました。 やはり、ブックトークは話し手だけでなく、聞き手の協力があって成立するのだと、改めて思い知らされました。


さて、そんな少し荒れた雰囲気の中でも、集中力を切らさずに一生懸命聞いてくれるご家族があります。親子が顔を近づけて、楽しそうに聞いてくださいます。 実は、上手に聞いてくれるご家族は、いつも親御さんが、私たちの言葉を拾って中継してくれています。子供さんに顔を寄せて、こちらを指さしながら、「ほら、キリンさんだって。」「カエルさん、大きいねー。」といった感じです。お互いの顔を近づけて、一緒に楽しんで下さっているのです。 一方で、聞けない子のご家族は、親と子のお顔の距離が離れています。グニャグニャしてしまったお子さんを、大人の力でまっすぐにして、「シー!聞きなさい。」「もう少しだから…」といった感じです。どうしても聞けない時には、キラキラするものや、グミなどのお菓子が出てきます。最近では、音を消したスマホまで登場します。それでは、気持ちが本から離れてしまい、子供たちは “本以外の何か” を求めて、さらにぐずってしまいます。 また、上手に聞いてくれるご家族は、もしお子さんがぐずって聞けない時には、一度席を外されて、落ち着いてから戻ってこられます。ご自身のお子さんはもちろん、周りのお子さんがゆっくり聞けるようにして下さるのです。聞けない子のご家族ほど、ギリギリまで残られて、結局落ち着くことなく “サッと” 帰ってしまわれます。


「小さい頃の読書(読み聞かせ)は大切です。」とよく言われ、お母さんたちも一生懸命です。しかし何が大切なのでしょうか。きっと、読書が大切なのではなく、一緒に本を読んでいるときの「お互いを思いやる心」が大切なのだと思います。一緒に本を読んでいると、知らず知らずのうちに、読み手と聞き手が、お互いを思いやって、感謝し合っているように思います。集団で聞いている場合には、周りの人のことも“思いやり”ます。小さい子はぐずって当たり前、みんなで我慢して協力してお話を聞きます。ぐずる方も周りに気を使って、感謝し合うのです。


人と関わらないでいられる、人を思いやらなくてもいい便利な道具が増えました。それは子供同士や、家族の距離も確実に遠ざけています。昨今の悲しいニュースの背景には、それが見え隠れします。

「小さい頃から、親子が一冊の本を一緒に読む(聞く)。」ということは、お互いを思いやる心につながっているのではないかと思います。子供たちのためだけでなく、私たち大人にとってもおそらくそうなのです。

ご家庭で、お母さんが子供に本を読んであげているときに、お父さんが「せっかくママが読んでくれてるよ。一緒に聞こう。楽しいねー。」なんて会話が聞こえるご家族に増えて欲しいと思います。


次回は一週お休みをいただきまして、6月15日,16日。場所は長野県茅野市です。

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