すべてのお母さんに届いて欲しい。
2019年5/25,26 新潟県南魚沼市 南魚沼市民会館
執筆担当者:大塚智子
先週は、新潟県南魚沼市にて開催しました。お隣の魚沼市では2014年に開催しましたが、南魚沼市での開催は今回が初となります。田植えの時期や運動会も重なったためか、お客様は少なめ。しかし、来てくださった皆様は長時間滞在される方が多く、お一人お一人とゆっくりお話しができました。
土曜日に、男の子の赤ちゃんを抱っこしてお若いお母さんが来場されました。ブックトークの時間に来てくださったのですか、お部屋に入るなり赤ちゃんは大泣き。お客さんのほとんどが大人の方だったので、居心地の悪さを感じてしまったようです。お母さんは一旦外に出て赤ちゃんをあやし、落ち着いたらまた戻って、を何度か繰り返されました。
実は今回お借りしたお部屋はリハーサル室。普段は控え室などで利用されるお部屋です。ロビーを抜けさらに細く長い廊下を抜けてたどり付く奥のお部屋なので、おそらく赤ちゃんは病院に連れていかれるような心細さを感じたのかもしれません。
一旦「ここは嫌だ」のスイッチが入ってしまうと、ご機嫌が戻るのは難しいですよね。 お母さんは結局一冊もご覧になることはできず、あきらめた様子で出て行かれました。私はお母さんの後を追いかけ「空いているときに個別でもご紹介できますので、落ち着いたら是非」とお声をかけ、後ろ姿を見送りました。赤ちゃんの耳には補聴器がついており、どうしても絵本をご覧いただきたかったのです。
そして日曜日。最後のブックトークにお母さんお一人で来てくださいました。赤ちゃんは、おじいちゃんおばあちゃんが預かってくださっているとのこと。ブックトークの後もゆっくりと絵本をご覧いただくことができました。お話をお聞きすると、赤ちゃんは聞こえないわけではないが難聴で、どのように言葉を教えていけばいいかを悩まれているとのことでした。
私は専門家ではないので、直接的なことは何も言えません。ただ一冊の絵本をご紹介しました。ベネズエラの作家さんの、真っ黒なページにエンボスに描かれたイラストと "点字" が美しい絵本です。盲目の男の子トマス君が、色について語ります。
「黄色はマスタードの味がする。でも触ってみると赤ちゃんひよこの羽の柔らかさ。赤はイチゴやスイカの甘酸っぱさ。そしてそれは、ひざ小僧をすりむいた時の痛さでもある。」
「見る」以外の感覚を研ぎ澄まして、色を美しく感じっているのです。実はこの本には、それ以上に深いテーマが隠れています。「お母さんがそばにいることだけ、寄り添ってたくさん声をかけてあげることだけ、何よりもそれが子どもの世界を広げていく。」ということです。読み終えると、お母さんはポロポロと涙を流されました。 初めてのお子さんの耳が聞こえづらい。どれだけ心細かったことでしょう。
でも、お母さんがそばにいてあげるだけ、特別なことはなにもいらないと、絵本は教えてくれるのです。
世の中のすべてのお母さんに、この想いが届けばと願っております。
次回は千葉県市川市です。
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