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実体験離れ ?

「本離れ」が話題にもならないくらい当たり前の時代、私たちが感じていることです。


2019年12月21日,22日 神奈川県横浜市 港南区民文化センター「ひまわりの郷」

執筆担当者:武田朋彦



今年最後の「がいこくえほん展」。先週は、横浜市港南区民文化センターにて開催いたしました。大きな駅直結の商業施設の上にある文化会館、周りには横浜市郊外のきれいな住宅地が広がって、若い世代も少なくありません。クリスマスの賑わいの中、たくさんのご来場を期待していましたが、やはりお客様は少なめでした。ただし来て下さった方々のご関心は高く、皆さま長時間滞在してくださって、たくさんお話しさせて頂けて、一年の締めくくりとして充実した時間を過ごすことができました。ありがとうございました。


今年一年を振り返ってみますと「お客様が来ない。どうしよう。」の一言に尽きます。

私たちは、イベントの告知を、新聞や地域情報誌への折込広告、周辺の幼稚園保育園から園児さんのご家庭にチラシを配ってもらうなど、色々な方法で行ってきました。かなりの枚数のチラシが配られています。かつては新聞折込からたくさんのお客様が来て下さいました。若い世代の新聞離れが言われ始めてからは、幼稚園、保育園のチラシからのお客様が中心になりましたが、今はあまり絵本に関心がないご家庭も多いようで、それも少なくなりました。最近はSNS広告にも力を入れてみましたが、あまり効果がありませんでした。


実はSNS上の広告の反応は上々なのです。「興味あり」や「いいね!」はたくさん入ります。SNSの広告マネージャーさん(AI)からも、いつも、ほかの90%以上の同様の広告にくらべて広告効率が良い。とほめて頂いております。しかし「お客様は来ない」のです。

色々なことを考えます。やはりこれは「実体験離れ」なんだと思います。前回も書いていますが、人が足を運んで、自分の目で見て、自分の手で触って、自らが確かめることを求めなくなっているのかもしれません。世の中には、美しいキャッチコピーやコマーシャルが溢れています。それを拾っておさえて、心の中で「いいね!」をつけておくことで、完結してしまっているのかもしれません。私自身も、ネットニュースの見出しだけをざっと読んで、時事問題に関心があるように錯覚しているようなところがあります。


今は「検索社会」です。わざわざ足を運んだり探したりしなくても、その時に必要なものだけを検索して、ピンポイントで目的が達成されて非常に効率的で便利です。途中に無駄がありません。しかし、そうして集まった情報だけで満足してしまっているのは、少し残念な気がします。また、人の意識がそうなると行動も変わります。そういえば以前にくらべて、会場入り口のポスターに目を留めて、たまたま立ち寄って下さるお客様が少なくなりました。入り口で見ていると、皆さん脇目も振らず目的の場所に一直線です。となりの部屋で幼稚園の先生方の集まりがあっても「がいこくえほん展」のポスターに気付かれません。最近の若い先生方はあまり興味ないのかな、と思っていましたが、おそらく人の興味がその時の目的以外には向かなくなっているのだと思います。別に悪い事ではないのでしょうが、それではなかなか世界が広がらないのではないでしょうか。


今回の印象的なお客様です。土曜日のブックトーク直前、一人の男性が入ってこられました。となりの音楽練習室で練習を終えた方が、私たちのポスターを見て、“たまたま” 立ち寄って下さったのです。ブックトークにお誘いすると、少し戸惑いながら一番後ろの席に座ってくださいました。本がお好きという男性は楽しそうに聞いてくださって、「うちの奥さんが本当に好きそうなので、明日また来ます。」と言って帰られました。とはいっても本当に来て下さる方は、今まであまりいませんでした。

しかし翌日、男性は奥様と男の子の赤ちゃんと一緒に、3人でブックトークに来てくださったのです。奥様は本当にお好きなご様子で、笑ったり涙ぐんだりしながら聞いてくださいます。ご主人も、昨日と同じ本でも楽しそうに「これこれ、これがいいんだよ。」などと言いながら楽しんでくださいます。ブックトーク終了後もしばらく滞在され、ひととおり見てくださった後「赤ちゃんがおなかが空いたようなので・・・」と退出されました。もう少しご紹介したかったなと思いつつ、お見送りしました。


何とご家族は、次のブックトークにも来てくださいました。ご主人には、同じ本を3回お話することになるのですが、それでも楽しそうにしてくださいます。その後も長時間滞在され、先程ご紹介できなかった本もたくさん見て頂き、当然のように私たちのお客様になって下さいました。お聞きすると、奥様は大学で教師を目指す学生たちを教えていらっしゃるそうです。本にもお詳しいご様子でしたが、そういった方に絵本をお届けできるのは、本当にうれしいことです。


私たちが、今は「えほん展」というポスターに目を留めて下さる方が少ないことをお伝えし、ご主人にお礼を申し上げていると奥様がおっしゃいました。「私も主人に感謝です。こんなところを見つけてくれて、連れて来てくれて・・・。」本当に素敵なご家族でした。


今は、たくさんの便利で楽しいものがすぐ側にある時代です。私たちは以前にくらべて、自ら動いて楽しみを探すことをしなくなったような気がします。スマホ動画やDVDで、“受け身” に時間を過ごすのではなく、自らのペースで時間をすすめ、時には立ち止まり、時には戻ったりもする・・・。本を読むことは、自ら出掛けて、手に取って、探す作業に似ています。やはり、本が好きな子供たち(未来の大人たち)に増えて欲しいと思います。そして、実体験を求める人に増えて欲しいと思います。


出掛けよう。そして途中を楽しもう。寄り道の途中に虹が見えるかもしれません。


私たちは本を売っていますが、本を売りながら伝えたいことは、そういうことなのかもしれません。


「がいこくえほん展」は、1ヶ月ほどお休みをいただきます。絵本の魅力をお伝えするために何ができるか、足を運んで頂くためにはどうすればよいか、えほん展の形を少し変える必要があるかもしれません。より良いものにしたいと思います。詳細はこのfacebookでご案内致します。


皆さま、よいクリスマスを!! そして、よいお年を。


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